壮絶な夫婦喧嘩

主人を目の前に正座させ

私は主人の前に仁王立ちのまま話を始めた。

冷静を心がけながら

自分の中に溜めていた言いたい事を

全部残さず言ってやろうと思っていた。

 

「クソ女から連絡来たんだね。

 浮気は認めるって事で良いの?

 いい年こいて何してくれてんの?

 結婚して子供もいるんだよ?」

と、私が言うと

「本当にごめん、離婚してくれ。

 今までありがとう」

と主人は調子よく言ってくる。

「お前の都合で離婚はできないんだっつーの」

と私が言い返すと主人は黙ったので

「そもそも本気なのか遊びなのか」

と浮気について聞くと

「遊びに決まってる!

 相手の女がしつこくなってきたから

 終わりにしようと思ってたところで

 お前にバレたんだ」

と、この期に及んで主人は言ってくる。

「いつからの関係かもわからないのに

 終わらせようと思ってたって言い訳は

 都合良いよね?」

と私が突っ込むとまた主人は黙った。

「これからどうするつもりなの?」

と私が聞くと

「俺この家(主人の持ち家)出るわ。

 仕事も辞めてお前たちと離れて暮らす。

 手続きや準備に半年時間をくれ」

と言ってきたので

「なんで半年も時間かかるの?

 お前にとって結婚は何なの?

 浮気がバレたら離婚するって言いだすのは

 浮気するにも覚悟なさすぎじゃない?

 バレた時の事を考えなかったの?

 結局自分の都合で自分の事しか考えてないよね?」 

と質問を並べても主人は黙ったまま。

「何か私に不満あったの?」と聞くと

「最近のお前の小言が面白くなかった」と言う。

 

私は主人と結婚する前から手に職があるので

主人と収入も大差なく

ぶっちゃけ主人から生活費という生活費を

貰った事がなかった。

もちろん家のローンなどは主人が負担していて

私は生活用品や食費を主に担当していた。

そのため妊娠中も産休中も収入がない間でも

自分の貯金を切り崩して生活費に充てていたのだ。

子供が産まれてからもその生活は変わらず

主人は自分の給料を好きなように使っていた。

私はそんな生活でも文句はなかったのに

私よりも自由な時間があって

自由な金もあってさらに浮気までされたら

夫婦として一緒に暮らす意味が見いだせない。

 

「小言だけ?じゃあ言わせて貰うけど

 生活費も入れない、共働きなのに

 子育てに協力的じゃない、

 私は出産してから負担は増えたのに

 お前の生活は何一つ変わってねーよな?

 それで小言?小言の一つも出るわ!」

と言い返した。

 

私と主人を繋ぎとめているのは

主人に懐いている我が子だけ。

離婚すると私には新しい人生が待っていて

子供の親権も間違いなく取る事ができる。

でも子供の将来を考えて

離婚という選択肢は最後まで残しておきたかった。

 

「半年後に離婚するにしても

 それまでは良いお父さんでいてね。

 子供はまだ説明しても理解できないんだから」

と私が言うと

「わかった…俺の洗濯はもうしなくて良いし

 飯もいらないから」

と言ったので

「いつ女と会ってたかわからない服なんて

 汚くて一緒に洗濯したくないわ。

 食事は子供がいる手前一緒に食べなくても

 食卓にはいるようにして」と伝えた。

すると主人は車庫へ行こうとしたので

私も子供を迎えに行こうと玄関へ向かうと

血相を変えた主人が私を見るなり掴みかかってきた。

「てめぇ!車の鍵どこに隠したのよ!」と言っている。

勢いでキッチンカウンターに置いてあった

コップやサボテンをなぎ倒し

室内は泥棒が入ったような有様になった。

抑えていた怒りが爆発したのだろう。

私は自分でも信じられないほど冷静で

「ちゃんと話できるかわからなかったから

 鍵まとめて持ってただけだから」

と伝えても主人には聞こえていないようで

腕を掴んで振り回されたかと思えば

倒れた私を引っ張り起こし首を絞め

そのまま壁にドンドンと頭を打ち付けた。

首を絞められたまま「殺す気?」と言うと

「なんなのよ!テメー!」ともう手が付けられない。

首から手を離したかと思えば

横から足が飛んできて肩の下に蹴りが入った。

「私に手を挙げても何も解決はしねーからな!」

と私もやり返しはせずに口だけ返した。

すると最後に背中に蹴りがクリーンヒットし

主人はそのまま車の鍵を持ってまた車庫へ行った。

 

過去に私は日常的にDVをする人と

交際していた事があったせいか

主人が私に手加減している事もわかり

本気で殺す気ではないと咄嗟に判断できていた。

ここでDV彼氏が役に立つとは思いもしなかったけど。

 

私は主人の後をついて行くと

車庫で怒りに震えながら殺人者のような目つきで

「あー!!クソがーーー!!!」などと

大声を上げながら私の車にも蹴りを入れていた。

 

私はそんな主人を冷ややかな目で見ながら

「落ち着いた?私が反撃しなかった理由、

 冷静に考えたらわかるよね?

 浮気したにも関わらず暴力も振るったら

 お前に色々な意味で勝ち目はないからな」

「冷静に話せる時に今後についての話はするけど

 とりあえず私は子供を迎えに行ってくるわ」

と主人に言うと

主人は「ごめん」と一言だけ言ってきたが

「もう取り返しつかねーから

 自分の立ち位置について考えな」

と言い捨てた。

 

主人からの逆上した暴力も想定内ではあったが

よけきれず背中に蹴りがヒットしたせいで

動いても息を吸っても痛みを感じるようになっていた。